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「あれ」を裏返せ 恩田陸「エンド・ゲーム 常野物語」 [SF]

2011年10月30日(日)

 恩田陸「エンド・ゲーム 常野物語」読了。
 主人公の拝島時子は、女子大生。
 彼女には、世の中が常人と違って見える。
 普通の人々の中に、「あれ」が混じっているのが判るのだ。
 時子の母親の暎子も同じ体質の持ち主で、父親もそう。
 父親は時子が小学生の頃に失踪し、以来母と娘の二人暮らしだ。
 拝島一家は「あれ」が見えるだけではなく、「裏返す」ことが出来る。
 しかし「あれ」の方でも彼女達を裏返すことが出来るわけで、その戦いは普通の人々が知らないとところで、果てしなく続いている。
 どうだい、何のことだか判らないだろう。
 「光の帝国」「蒲公英草紙」に続く常野シリーズの第三弾だが、今までとはなんだか感じが違う。
 何重にも入り組んだ迷路の中をさまよっているようで、山田正紀の「神獣聖戦」の1エピソードにしてもおかしくないぐらい。
 後書きで作者が、物語の第三作目の難しさみたいなことを書いている。
 しかし、その高いハードルをクリアしたというよりは、別のフィールドに入っちゃったような気がする。
 精神世界での行動が延々と続くあたりは、私にとって、ちょっと苦手なパターンだ。
 まあ、このシリーズはまだまだ続くそうなので、次を楽しみに待つようにしよう。 


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お姫様は暴れん坊 高千穂遥 「クラッシャージョウ① 連帯惑星ピザンの危機」 [SF]

2011年10月25日(火)

 高千穂遥「クラッシャージョウ① 連帯惑星ピザンの危機」読了。
 山田正紀の「神獣聖戦 Perfect Edition」が、なんだかよくわからなかったので、今度は明快なスペースオペラを。
 時は遥か未来。
 人類はワープ航法を手に入れ、宇宙に広く進出していた。
 銀河系に幾多の国家を建設し、銀河連合なるものを組織している。
 その中で宇宙開発に伴う危険な仕事に従事するのが「クラッシャー」と呼ばれる特殊職能集団である。
 もともとはその危険性から、ならず者の集団に近かった。
 しかし一代の大立者、クラッシャー・ダンがまっとうな組織にまとめ上げ、現在に至っている。
 その息子がジョウで、腕利きのクラッシャーでもある。
 ある日ジョウとその仲間が一仕事終えてくつろいでいると、救難信号をキャッチする。
 救命ボートに近い宇宙船に乗り宇宙空間を漂っていたのは一人の若い女の子。
 彼女は太陽系国家ピザンの王女で、国にクーデターが起き、単独脱出してきたのであった。
 どうだい、判りやすいだろう。
 私も最初は面白いと思っていたのだが、途中からありゃりゃと言う感じになっていく。
 クーデターと言うのは、ある悪い奴が3Dテレビを使って、国民に催眠術をかけ意のままに操り、反乱を起こすというもの。
 受けたつ側の王様も、相手は元々自国民なので、武力で蹴散らすわけにもいかず、みすみす敵の軍門に下る。
 なかなか巧妙な設定である。
 王の意を受け脱出した王女アルフィンは、クラッシャーたちを雇い国へと戻る。
 問題はここからで、ジョウ達の侵入を阻もうと襲い掛かってくるピザンの兵士達を、片っ端から銃で殺してしまうのである。
 ジョウだけならともかく、王女アルフィンまでもがノリノリで手榴弾など投げつけている。
 相手は昨日まで自分達を守ってくれていた兵士達であり、今は催眠術で操られているだけなのだが、そういうところには考えが及ばないらしい。
 公共施設なども破壊しまくり。
 最初の巧妙な設定が台無しである。
 まあ、王女のそういう性格が、最後の方に生かされてはいるんだけど、それにしてもなあ。
 本来なら、荒っぽい手段で物事を解決しようとするクラッシャー達に、王女が誰も傷つけないようにと厳命し、それによって危機に陥るというのが筋だろう。
 大体クラッシャーの側でも、危険なことはしても、非合法な仕事には従事しないという鉄の掟があるわけだし。
 で、プロ中のプロである彼らが困難の中、敵をやっつけてめでたしめでたし、である。 
 そこの部分にどんな工夫が出来るかが、クラッシャーの腕の見せ所であり、作者の腕の見せ所であるわけだ。
 もし、ああいうオチにしたいということなら、その枠の中で無茶苦茶させればいいわけだし。
 と、散々文句を言ってきたが、じゃあ二度とこのシリーズは読まないかと言うと、これがまた読んじゃうかもしれないのである。
 人間て、不思議だなあ。 

 
 


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エイリアンがやって来る ヤア!ヤア!ヤア! 「カウボーイ&エイリアン」 [SF]

2011年10月22日(土)

 上大岡で「カウボー&イエイリアン」を観る。
 土曜日の、しかも初日にかかわらず、客席はがらがら。
 こりゃあ一体、どうしたことだ。
 内容そのものは、なかなか面白かった。
 要するに、西部劇の世界にエイリアンがやってきて悪さをし、ガンマン達と戦う話。
 本当に、そのまんま。
 こういうお馬鹿な企画に、大の大人達が大真面目で取り組んでいる。
 まあ色々意見はあるだろうが、こういう姿勢は偉いなあと思うのだ。
 まず主演のダニエル・クレイグが良い。
 007より、はまっているんじゃあないか。
 大体、甘さの無い悪役顔なので、スーツなど着ていると敵の殺し屋にしか見えないものね。
 その点、この主人公は元々ならず者なので、ぴったり。
 謎の女エラ役の、オリヴィア・ワイルドも素敵だ。
 西部劇の世界には違和感があるのだが、役が役なので、それでいいのである。  
 頑固でタフな元軍人役の
ハリソン・フォードは、なんか似合わないような気がする。
 一昔前なら、クリント・イーストウッドにやってもらいたかったところだ。
 もっと前なら、ジョン・ウェインかな。
  公開時期が「世界侵略・ロサンジェルス決戦」に続いちゃったので、ちょっと損をしているかもしれないが、エイリアン面白対決物としてはこちらのほうが上か。
 やっぱり、西部劇の部分がしっかり作られているからだろうな。
 
 日本だって、やれば出来ると思うんだが。
 私が一番観たいのは「エイリアン対大魔神」。
 悪政により庶民が苦しんでいる、とある藩。
 しかしてその実態は、殿様にエイリアンが乗り移り、思うがままに振舞っていたのだった。
 その正体に気づいた一部の人達が戦いを挑むが、なにせ相手はエイリアン。
 いいようにやられてしまう。
 もはやここまでと思わず流した乙女の涙に大魔神が覚醒し、大暴れの末、見事エイリアンを串刺しにする、みたいな。
 ちょっと昔の方の「妖怪大戦争」みたいだが気にしない。
 時代劇の部分を丁寧に作れば、結構面白いと思うぞ。

 話を「エイリアン&カウボーイ」に戻すと、実は抜群に面白いのは最初の方で、後に行くほど突っ込みどころ満載。
 まさかあれでエイリアンたちが地球侵略をあきらめるとは思えないものね。
 それとも続編ための伏線か? 

 


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シーザー売り出す 「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」 [SF]

2011年10月13日(木)

 ダイエーで「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」を観る。
 かの懐かしき「猿の惑星シリーズ」の、別バージョンと言ったら良いのか。

 (以下、多少ネタバレ)
 ある製薬会社(その名も「ジェネシス」)が、アルツハイマー病に効く薬を開発する。
 で、その薬の効能を試すため、猿を実験台に使う。
 特に一匹の猿に効果が現れ、異常に知能が発達する。
 なんだかんだと有って、その猿の息子が会社に内緒で育てられることになる。
 シーザーと名づけられたその猿も、異常に頭が良い。
 しかし世間とうまく行かなくて、施設に入れられてしまう。
 どうなるシーザー、というお話。
 小さい頃は、無邪気に飛び回る、やんちゃ坊主。
 このあたりは、実にかわいい。
 しかし思春期になり、自分とこの世の中の矛盾した関係に悩むあたりから、話がぐっと重くなる。
 いじめられるにつれて、その目に暗い影が宿り、ジェームズ・ディーンか「スタンド・バイ・ミー」のリバー・フェニックスみたい。
 溜め込んだ怒りが、最後に爆発するあたりは東映か。

 シーザーの方に色っぽい話が無いのも、話を男っぽくしている。
 普通だったら若いメス猿を配して、ドラマを作るところだ。

 (以下、創作)
 たとえば、施設に君臨しているボス猿がいて、メス猿達はみんな彼の周りで機嫌をとっている。
 しかしある若いメスだけが、どうしてもなびかない。
 結果、みんなでのけ者にして、エサもろくにもらえない状態になっている。
 それに憤慨したシーザーが、ボスと対決。そのメス猿を庇護下におく。
 彼女は、その男らしさにうっとりとし、以来寄り添うようになる。
 牢獄のような施設の中で、小さな安らぎを得たシーザー。
 しかしある日、若いメス猿は実験台として、製薬会社に連れて行ってしまう。
 実験台として亡くなった母親の面影も、まぶたの裏に重なる。
 堪忍袋の緒が切れたシーザーは、仲間と共にジェネシスへと決死の突入をするのであった、みたいな。

 通俗かもしれないが、この方が話がすっきりするのではないだろうか。
 飼い主の男性が恋人といちゃついているのに嫉妬を感じるあたりから、自我が目覚めてくるわけだし。
 その辺はパート2で、というつもりなのかもしれないが、あの結末だと続編は作りづらいかな。
 


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ツァちゃんの大冒険 山田正紀「神獣聖戦 Perfect Edition」 [SF]

10月11日(火)

 山田正紀「神獣聖戦 Perfect Edition」読了。
 
 牧村孝二は腕の良い庭師。
 彼には特殊能力があり、物理的な手段によらず火星とかを訪れる事が出来るらしい。
 それに目をつけたのが、S-企業グループの総裁、東田太平。
 未来を握らんと、牧村孝二を囲い込む。
 関口真理は、ケーキのデザイナー。
 牧村孝二と出会うなり、恋に落ちる。
 しかし二人は、人類の終末に立ち会うアダムとイブでもあるようだ。
 彼と彼女は何度も生まれ変わり、色々な世界で出会い、恋人になる。
 また、それぞれの世界の中で、関口真理の前に一匹の猫が現れる。
 真理は彼に、ツァラトウストラと言う名前をつける。
 彼は猫のように見えるが、実は猫ではない。
 次元の違う時空間を行き来し、恐竜の群れや、巨大蜘蛛や、ジェット戦闘機とやりあっている。
 弱点(?)は、宙返りが出来ないこと。 
 話を戻して、牧村孝二の脳からは航宙刺激ホルモン(FISH)が分泌され、やがて人類は、光速の壁を越え宇宙を自由に行き来できるようになる。
 しかし、そのためにはM・M(鏡人=狂人)になり、背面世界に入る必要があった。
 ところが、
ここにデモノマニア(悪魔憑き)という存在があらわれ、M・Mと果てしない闘争を繰り広げるようになる。
 デモノマニアは、M・Mと旧人類の中間ぐらいに位置している。
 しかもM・Mの上位には「大いなる疲労の告知者」と言う存在がある。
 一方、地球には「幻想生命体」が跋扈している。
 藻の一種らしいのだが、人間の下意識の働きかけ、幻想を見せる。
 で、まあ色々有って人類は絶滅してしまい、ツァラトウストラは宙返りが出来るようになる、というお話だ。

 どうだい、何のことだか判らないだろう。
 作者が昔書いた「神獣聖戦」という連作短編に大幅に加筆し、長編風に組み立てなおした物らしい。
 私は以前の「神獣聖戦」を読んだことがないので、最初から長編小説を読むつもりで向き合った。
 でもそういうことは、あんまり関係ないような気がする。
 全部通して読んだからって、すっきりとその世界が理解できるわけではないのだ。
 冒頭で要約したエピソード「渚の恋人」を頭に持ってきて、「ネコと蜘蛛のゲーム」の後に「交差点の恋人」を続けてけていれば、多少すっきりしただろうか。
 意図的に読者を混乱させるような書き方をしているようだ。
 しかし最後まで読み通すことが出来たのは、個々のエピソードにおけるイメージの力だ。
 「Perfect Editin」と銘打っているにもかかわらず、この後「新・神獣聖戦」とか、「帰ってきた神獣聖戦」とか、「神獣聖戦・ファースト・ジェネレーション」とか
出てきたら面白いんだがなあ。
 


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時空を越えて 小松左京「時間エージェント」 [SF]

2011年8月10日(水)

 日本SF界の巨人、小松左京氏が先日亡くなった。
 享年80歳である。
 私も、かつてはSF少年だった時期がある。
 1960年代後半から70年代にかけての日本のSFは、なんだかわくわくする物があったのだ。
 さらに椎名誠が、そのエッセイでダン・シモンズの「イリアム」をとりあげていたのにも刺激され、SFを一つのカテゴリーとして設けてみた。
 小説だけではなく、マンガや映画もここで扱うつもり。

 まずは、やはり小松左京。
 と言っても、今や小松左京の本って書店では見かけないのだ。
 今回読んだのは、ポプラ社文庫から出ている「時間エージェント」。
 半分以上を、タイムパトロールを主人公にした連作短編シリーズがしめている。
 昔このタイトルで、新潮文庫から出ていたっけ。
 それはもう、とっくに絶版。
 その後ハルキ文庫で氏の大半の作品が出されたが、なぜかこのシリーズだけは入っていなかった(はずだ)。
 私が読むのも初めてである。
 主人公は、ひょんなことからタイムパトロールの隊員になった青年。
 基地は銀座並木通りの路地裏にあり、隊員はグラマー美女の所長と青年の二人きり。
 なぜか所長は青年にほれている。なおかつ、そっち方面には積極的で、ちょっとエロチック・コメディーみたいなつくりになっている。
 遠い未来にあるらしい本部からの指令で、主に時間犯罪者が引き起こすトラブルを解決するために飛び回ることになる。
 しかし世界の危機を回避するために、タイムパトロール自身が自ら歴史の裏で暗躍することも。
 でも良いのか、そんなことして。
 それこそ歴史が変わっちゃうじゃあないか。
 ここいらへんがタイムパトロール物の、わけのわからないところだ。
 大体タイムトラベルが実現した段階で、歴史と言うものは変わらざるを得ないと思うのだが。
 で、歴史に改変が加えられた段階で、時間は枝分かれし、改変のなかった世界と別の流れが続いていく、と言う考えが出てくる。
 あらゆる可能性がある世界が平行して続いている、いわゆるパラレル・ワールドという奴だ。
 しかし、それならタイムパトロールなんて必要ない気がする。
 まあ、あまりそういうことにこだわらなければ、SFにとっては格好の題材であることは、確かだ。
 今では、タイムトラベル(タイムスリップ)という手法は、一般的な作品にも使われているぐらい。
 かわぐちかいじの「僕はビートルズ」なんてのもそうだし、他にも一杯ある。
 で、この本に入っている他の作品も「時間物」かと言うと、そうではない。
 ユーモア物、及びエロチックな物というくくりで集められているようだ。
 なんだか無理やりな気もするが、個々の作品はそれぞれ楽しめる。
 とはいえ、現代の若者の目にはどう写るんだろう。
 ユーモア物もSFも、それが書かれた時代に影響を受けるために、時がたてば古びてくるのは否めない。(例えば「ケメ子」なんてえネーミング)
 それでも残っていく作品も有れば、新たな光を放つ作品もあるわけで、その辺も探りながら行ってみたい。


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