お姫様は暴れん坊 高千穂遥 「クラッシャージョウ① 連帯惑星ピザンの危機」 [SF]
2011年10月25日(火)
高千穂遥「クラッシャージョウ① 連帯惑星ピザンの危機」読了。
山田正紀の「神獣聖戦 Perfect Edition」が、なんだかよくわからなかったので、今度は明快なスペースオペラを。
時は遥か未来。
人類はワープ航法を手に入れ、宇宙に広く進出していた。
銀河系に幾多の国家を建設し、銀河連合なるものを組織している。
その中で宇宙開発に伴う危険な仕事に従事するのが「クラッシャー」と呼ばれる特殊職能集団である。
もともとはその危険性から、ならず者の集団に近かった。
しかし一代の大立者、クラッシャー・ダンがまっとうな組織にまとめ上げ、現在に至っている。
その息子がジョウで、腕利きのクラッシャーでもある。
ある日ジョウとその仲間が一仕事終えてくつろいでいると、救難信号をキャッチする。
救命ボートに近い宇宙船に乗り宇宙空間を漂っていたのは一人の若い女の子。
彼女は太陽系国家ピザンの王女で、国にクーデターが起き、単独脱出してきたのであった。
どうだい、判りやすいだろう。
私も最初は面白いと思っていたのだが、途中からありゃりゃと言う感じになっていく。
クーデターと言うのは、ある悪い奴が3Dテレビを使って、国民に催眠術をかけ意のままに操り、反乱を起こすというもの。
受けたつ側の王様も、相手は元々自国民なので、武力で蹴散らすわけにもいかず、みすみす敵の軍門に下る。
なかなか巧妙な設定である。
王の意を受け脱出した王女アルフィンは、クラッシャーたちを雇い国へと戻る。
問題はここからで、ジョウ達の侵入を阻もうと襲い掛かってくるピザンの兵士達を、片っ端から銃で殺してしまうのである。
ジョウだけならともかく、王女アルフィンまでもがノリノリで手榴弾など投げつけている。
相手は昨日まで自分達を守ってくれていた兵士達であり、今は催眠術で操られているだけなのだが、そういうところには考えが及ばないらしい。
公共施設なども破壊しまくり。
最初の巧妙な設定が台無しである。
まあ、王女のそういう性格が、最後の方に生かされてはいるんだけど、それにしてもなあ。
本来なら、荒っぽい手段で物事を解決しようとするクラッシャー達に、王女が誰も傷つけないようにと厳命し、それによって危機に陥るというのが筋だろう。
大体クラッシャーの側でも、危険なことはしても、非合法な仕事には従事しないという鉄の掟があるわけだし。
で、プロ中のプロである彼らが困難の中、敵をやっつけてめでたしめでたし、である。
そこの部分にどんな工夫が出来るかが、クラッシャーの腕の見せ所であり、作者の腕の見せ所であるわけだ。
もし、ああいうオチにしたいということなら、その枠の中で無茶苦茶させればいいわけだし。
と、散々文句を言ってきたが、じゃあ二度とこのシリーズは読まないかと言うと、これがまた読んじゃうかもしれないのである。
人間て、不思議だなあ。
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