にゅう・せんちゅりー 恩田陸「蒲公英草紙」 [本]
2011年6月25日(土)
今日は鴨居で「007/ロシアより愛をこめて」を観る。
世界征服をたくらむスペクターというグループがいて、東西陣営の間でうろちょろする話。
で、標的になったのがイギリスの諜報部員、007ことジェームス・ボンド。
ソ連の暗号解読器と美人をえさに、ボンドを引っ掛けちゃおうとたくらむ。
世界征服という壮大な目的の割には、やっていることがせこいが、当人達はこれが頭の良いやり方だと信じている。
イアン・フレミングの小説では、ソ連の諜報機関スメルシュとボンドとの戦いと言う構図のよう。まあ、その方が自然だよね。
世界征服をたくらむ謎の組織なんてのが現れたとたん、話が子供っぽくなる。
顔を見せないNo1は、膝の上で猫など撫でたりして、その後のいろんな作品に影響を与えているような気がする。
と、結構楽しんでいたのだが、なぜか途中で眠気と空腹感が襲ってくる。
おかげで、ストーリーがわかんなくなっちゃった。
何回か観ているから良いけど。
映画の後、ラーメンを食べ、橋を渡る。
鴨居駅と、ららぽーとの間には鶴見川が流れていて、川辺もきれいに整備されている。
ここを下流に向かって歩こうかと思ったりもしたが、今日は天気予報が悪い。
電車に乗り、本を読む。
恩田陸の「蒲公英草紙」。
恩田陸には、「常野」シリーズと言う不思議な力を持った一族の話がある。その中の一冊だ。
前作の「光の帝国」は読んだことがあって、凄く面白かった。
今度も、やはり良い。
一人の女性が自分の子供時代を回想する形で、物語は語られる。
舞台は、二十世紀初頭の東北の集落。
県の南部で山を越えれば、すぐ福島。
阿武隈川沿いの平野に位置する、比較的余裕のある農村地帯である。
つまり県は宮城県と言うことになる。
恩田陸は宮城県の生まれだから、そういう思い入れもあるのだろう。
集落の中心は槙村家という地主で、代々優れた人材を輩出している。
村の用水路や道路の整備。また学校や公会堂の建設までもが牧村家の財力によってなされている。
槙村のお屋敷は、村を見渡せる小高い岡の上に建っている。
語り手の峰子は、そのそばに住んでいる。
父親は医者で、診療所は洋風建築。
住まいの方は、日本家屋である。
峰子は、その二つをつなぐ廊下の窓から、隣のお屋敷を眺めるのが好きだった。
そんな峰子に、降ってわいたような話が持ちかけられる。
槙村家には五人の子供が居て、末の娘が聡子。
心臓が悪く、長いことは生きられないだろうと言われている。
学校にも行けず、日がな一日部屋の中で暮らしている。
したがって友達も居ない。
そんな聡子の話相手になってもらいたいというのだ。
峰子は聡子とは面識がなく、なんとなく億劫な気分。
それに槙村家には、廣隆というやんちゃな少年が居る。
この少年、何かにつけて蛙や蛇なんかをぶつけてきて、峰子は大の苦手なのだ。
しかし医者である父の頼みであり、またみんな槙村家にはお世話になっているので、しぶしぶ引き受けることにする。
そしてお屋敷に訪れた初日、早速現れたのは、やんちゃ坊主の廣隆。
いきなり峰子のお下げ髪に紐を結びつける。
その先には犬が。
猛然と襲い掛かってくる犬。
どうなる峰子。
うーむ、要約しているだけで、ちょっと恥ずかしい。
しかしここまででもわかるように、かなり昔の少年少女向けの物語の典型をなぞっているような話なのだ。
この後、峰子と聡子の交友。そして不思議な雰囲気を漂わす春田一家の出現と続き、少しずつ物語は転がっていく。
さらさらと流れる小川の水も、やがては怒涛の大瀑布みたいな展開に。
この人は、こういうの書かせると本当に上手いなあ。
「黒と茶の幻想」を読んで、訳がわからず以後敬遠していたが、少なくとも次の「エンドゲーム」ぐらいは、読まなくてはいけないな。
ちなみに春田一家には「しまう」と言う能力があって、それは使命でもある。
しかしある程度まで行くと「しまう」方も満タンになり、整理するために長い眠りにつく時期が訪れたりする。
私は尋常の人間のなかでも、キャパが小さい方なので、ちょっと考えさせられる物がある。
今日、映画館で襲ってきた猛烈な眠気は、つまりそういうことではなかったのかな。
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