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パスティーシュとは何か 清水義範「猿蟹合戦とは何か」 [本]

1月26日(月)

 清水義範「猿蟹合戦とは何か」読了。
 清水義範のお家芸であるパスティーシュ(文体模倣)ばかり集めた作品集。
 なんたって冒頭の「猿蟹の賦」が素晴らしい。有名な昔話である猿蟹合戦を、司馬遼太郎の文体で綴っている。初めて清水義範を読んだのが、この作品の入っている本だった。当時は司馬遼太郎も読んだことも無かったのに、やたらに感動したのを覚えている。
 その後、幾つか司馬作品を読んだ今も、やはりその面白さは変わらない。これはなかなか興味深いことだ。
 パロディーや模倣ってのは元ネタがあって、それを知っていてこそ、その面白さが味わえる物だろう。今まではそう思っていた。ところがどうも、そうとばかりは言い切れないようなのだ。要するに、荒唐無稽な御伽噺を、もっともらしい歴史小説の文章で綴るというところに面白さが生まれるのではないか。だから極端なことを言うと、読者が猿蟹合戦も司馬遼太郎も知らなくても、面白い物は面白いのだ。
 ちなみに私は、丸谷才一も中里介山も読んだことはない。しかし「猿蟹合戦とは何か」も「笠地蔵峠」も、きっちりと楽しめる。
 子供が読んでるマンガにも落語ネタみたいなのがあるが、元は知らなくてもそれなりに楽しんでいるようだし、そういえば「ボーダー」にも「一本刀土俵入りみたいな構図だな」なんて台詞があったっけ。蜂須賀センパイのずれっぷりを表現するのが眼目なので、長谷川伸の芝居など知らずともかまわないのである。
 模倣と言うよりも、ギャグやくすぐりの話になっちゃったので少し戻すと、昔、テレビで観た物まね芸。市川歌右衛門の旗本退屈男や片岡知恵蔵の多羅尾伴内等知らない子供達にも、人気があった。今でも木久扇師匠が時代劇の物まねやっているけど、大半の視聴者には何のことだかわからないだろう。
 あ、でもやっぱり猿蟹合戦ぐらいは知っていた方が良いかな。


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