藤色の靴下の行方 P・G・ウッドハウス「ジーヴスの事件簿」 [本]
7月9日(土)
P・G・ウッドハウス「ジーヴスの事件簿」読了。
20世紀のイギリスの上流階級を舞台に、間抜けなご主人バーティー・ウースターと、切れ者の執事ジーヴスが巻き起こす騒動を描くユーモア小説。
「事件簿」なんてタイトルがついているから、てっきりシャーロック・ホームズのヴァリエーションみたいな物かと思っていたら、全然違う。
殺人事件も、呪われた宝石も、謎の脅迫者も出てこない。
もっと日常的な問題を、頭は良いが曲者のジーヴスが手の込んだ方法で解決していく。
本来なら、バーティーがしっかりしていれば、問題にすらならないような事ばかりである。
バーティーが独身の若者なので、縁談や恋愛関係が多い。
この、ご主人がしっかりしていないというのが、ジーヴスにとっては重要。
案外我の強いジーヴスは、馬を操る騎手のような気分なのである。
服装などにもうるさくて、バーティーが好きなチェックのスーツや藤色の靴下など見ると眉をひそめ、いつの間にか処分してたりする。
それはバーティーも気がついており、何とか自力で問題の解決を図ろうとする。
しかし結局うまく行かず、ジーヴスに頼ることになる。
いろんな方面に影響を与えていそうだ。
このシリーズに限らず、ウッドハウスの作品ってのは英語圏の人たちには超有名らしい。
ただ言葉の微妙なニュアンスみたいなものがあって、翻訳では面白さの全てを伝えることが、難しいようだ。
ユーモア物は、特にそうだろう。
日本でも、例えば落語のサゲが現代の人間にはわからないなんて事がある。
それでも良く出来た物は、やはり面白い。
正直、解説を読むまでは、言葉のニュアンスうんぬんなど考えもしないで楽しんだ。
近年、ウッドハウス人気が再燃しているとの事。
これを機に日本でも、この手の軽妙なユーモア小説が書かれると良いな。
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