ソウル・マニア必読 ジョージ・P・ペレケーノス「変わらぬ悲しみは」 [本]
2009年12月26日(土)
ジョージ・P・ペレケーノス「変わらぬ悲しみは」読了。
黒人探偵、デレク・ストレンジ物の一冊。
ただ、本書でのデレクは、まだ探偵ではない。
などとわかった風なことを書いたが、この人の本を読むのは初めて。
音楽ファンということで、手にとってみた。
冒頭の第一部は、1959年のワシントン。デレクは12歳の中学生。家族や友人、また後々物語りにかかわっていく者たちの姿が描かれている。
大部分を占める第2部は1968年で、デレクは21歳。生まれ育った街で警察官になっている。
第一部ではリズム&ブルースのファンだった父親は、サム・クックの死などもあって、息子にレコードを譲っている。
そのデレクが好んで聴くのは、サザン・ソウルだ。
シングル・レコードのコレクターで、部屋でジェームズ・カーを聴いていたりする。
案外みんなラジオやレコードで音楽を聴いていて、そこはワシントンという土地柄かなと思う。
ライブでは、リンク・レイというギタリストと、そのバンド(レイメン)の演奏が描かれていて、なかなかの臨場感だ。
リンク・レイという人、まるで知らないのだが、ギター・ファンには人気があるようだ。
以前、レコード・コレクターズ誌上で、その名前を見たことがある。
作者のペレケーノスはギリシャ系の白人で、ワシントン出身。
1957年生まれで、私と同じ年齢だ。
本人はロックやジャズが好きなようで、ソウル・ミュージックに関しては、ちょっと勉強して書いているかなという感じもある。
もっとも、調べて書いているのは音楽だけじゃあなくて、当時の車、家電、映画、ラジオやテレビ番組、スポーツのことなどが、細かく細かく描かれている。
物語のクライマックスとなる黒人の暴動に関しても、実際に加わった人たちから話を聞いているとのこと。
とにかく、マメな人なのだ。
しかし、物語に作り物めいたところが無いのは、やはり生まれ育った街を舞台にしているからだろう。
じっくりと付き合っていきたいタイプの作家である。ただ、早川書房が手を引くという話もあり、気になるところ。すでに絶版になっている本もいくつかあるが、まああせってもしょうがないか。
出来るところからこつこつと、ということでいこう。
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