テキサスの鬼才 ジョー・R・ランスデール「ババ・ホ・テップ」 [本]
10月31日(土)
ジョー・R・ランスデールの短編集「ババ・ホ・テップ」読了。
最近のミステリーってのは、ほとんど縁が無く、この作家も初めて読んだ。
どうして読んだかと言うと、タイトル作に興味を引かれたから。なんたって副題が、プレスリー対ミイラ男だ。
死んだはずのプレスリーが、実はテキサスの老人ホームで生きていて、深夜に徘徊するミイラ男と対決するという、ぶっ飛んだ話。こういうの、モダン・ホラーって言うのだろうか。
ただ、この話だけが飛びぬけて凄いわけではない。最初の3篇こそ比較的おとなしいが、「ステッピン・アウト、一九六八年の夏」以降は、奇作、怪作の連続である。
日本人としては「ゴジラの一二段階プログラム」が気になるところ。あのゴジラ(松井秀喜じゃないよ)が、アメリカで一市民として適応しようとする、なんとも物悲しい話。キングコングも、ガメラも出てくる。
全体としては、品の無い筒井康隆という印象を受けた。
しかし本人は案外ストイックな人らしく、そのあたりは、ラストにおさめられたエッセイ「オリータ、思い出のかけら」で、うかがい知ることが出来る。
亡き母親の事を書いたこのエッセイをラストにおいた事で、本全体がぎゅっと引き締まったような気がする。なかなかにくい編集だ。
テキサスの作家というのも、興味を持ったポイントだった。ゲイトマウス・ブラウンや、ダグ・ザームや、デルバート・マクリントンなどの音楽が、どういう土地柄から生まれたか、てなことを考えながら読むのも、また一興なのである。
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